決して自分に言われているわけではないのに。
周囲に比べ、他者の感情に敏感な昶には僅かながらも感じたのだ。
あかねの中にある嫌悪や忌避という負の感情を。
「大丈夫……か?」
何故そのようなものを抱くのか分からない昶には、それ以外の言葉は見つからなかった。
だが目の前の親友は、いつものように笑顔で頷くと思っていた。
しかし――。
「………」
実際は違った。
あかねは終始無言で、ただ笑みを浮かべるだけだった。
それは何とも言い表せない曖昧なものだった。
「ッ……」
はっきり言って異常だった。
常に自分の意志をしっかり持ち、物事をはっきり言う彼女が、何も言う事もなくただ笑っている。
そんな昶の心情を察したのか、あかねは困ったように笑う。
「そんな顔しないで」
「けど…」
「気にしないで。でも久々に会うから少しは話すだろうし、このままじゃ集合時間に間に合いそうにないから、山川さんと先に行ってて」
独りでに話を進めるあかね。
それに対して何も言えず動けないでいる昶に、あかねは視線を合わせるように正面に立って、いつもと変わらない笑顔を向ける。
「心配しないで。後でちゃんと話すよ」
今、彼女が何を思っているかは分からない。
でも昶は知っている。
――こういう時のあかねは嘘を吐かない。
相手から決して目を逸らさずに話すときの彼女は。
それは確かであると信じている昶は、漸く頷いた。
「早く来いよ」
「分かってる」
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