桜空あかねの裏事情


「まさか…!オレ達というものがありながら、うわ」

「違う」


冗談を言う昶を一瞥し、背を向けて話を続ける。


「誰とも約束してないけど」

「ええ。こちらも聞いていないので、お断りしようと思ったのですが……貴女様のお知り合いと申されましたので」

「ふーん。あ、名前は?」


ふと兄弟達の事が頭に過ぎり、軽く聞いたあかねだったが、名前など聞かなければ良かったのかも知れない。


「はい。日向槐様と言う方なのですが」

「……ッ」


その瞬間息を呑み、強張った表情を見せたあかね。


「…あかね?」


その事に気付いた昶は、顔を出して様子を伺う。


「やはりお知り合いの方ですか?」


そして結祈は、あかねの反応から知り合いと判断する。


「……うん」

「一階の客間にお通ししてありますが、如何なさいますか?親睦のある方なら、お部屋にお通しする事もーー」

「通さないで。話すことなんかないから」


半ば遮りながら紡がれた言葉は、普段では有り得ない程冷めた物言いで、だった。
結祈は一瞬驚き唖然としていたが切り替えは早く、すぐに何事も無かったように笑みを浮かべた。


「承知致しました。ではそのように致しますね」


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