「ほな、うちはそろそろお暇します」
呆然としていたが、その言葉によって意識が呼び戻される。
「これさかいも、朔姫をよろしゅうお頼み申します」
手荷物を持ち直して、深く頭を下げる美代子。
「言われなくてもそのつもりだ」
「ふふ……ジョエルはんなら、そう言うと思うてましたわ」
ジョエルと美代子は軽く挨拶を交わす。
「あかねちゃんも、この先も朔姫と仲良うしてくれはると、嬉しゅうどす」
「はい!もちろんです!」
その答えに満足したのか、美代子は嬉しそうに微笑んで最後に朔姫の方を向く。
「ほなな、朔姫。また来月に会いにいくさかい。くれぐれも体には気ぃ付けてな?」
「ええ。お母さんも気を付けて」
「へえ。ほな、また」
柔和な笑みを飾ったまま館から出て行く美代子を、あかね達は見送った。
その時の空はあまりにも澄み渡っており、これから先に起こる事を予期させることもなく、悟らせる事さえしなかった。
.

