黎明館 玄関前
あかね達が二階の図書室にいる頃、朔姫は玄関前にいた。
洋風の装飾が施されている黎明館。
彼女からすれば既に見慣れた光景だが、今日は少し違っていた。
自身の隣には、和装に身を包み穏やかな雰囲気を纏って、目の前にいる男に話しかけている淑やかな女性がいるのだ。
彼女は朔姫にとって縁のある人物である。
「ほんま驚きましたわ。ジョエルはんが、わざわざ出迎えて下はるなんて思ってもみませんどしたし」
「私用で少々出ていてな。先ほど戻ったところに、丁度出くわしたまでの事」
「そうどすか。けんど、久しぶりに会えて良かったどす。相変わらず綺麗なお顔しはって、変わりまへんな」
「フッ。大袈裟な」
女性の言葉に、ジョエルは軽く笑う。
同じく女性も笑みを向けると、彼の隣にいる結祈にも声をかける。
「結祈はんも、忙しい時間にすまへんな」
「いえ。朔姫から帰宅するとお話を伺っていたので、お待ちしておりました」
「ふふ。若いのにしっかりしてはります。うちも見習わんと」
「恐縮です。自分はまだ未熟者ですから」
控えめにそう告げて、結祈は奥へ招き入れるように一歩横へ引いた。
「立ち話もなんですし、良かったら上がっていって下さい」
「おおきに。せやけど、これから予定が入っとるさかい。堪忍え」
「そうでしたか。久々にお話でもできたらと思ったのですが」
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