桜空あかねの裏事情


「あー……うん。まぁね」


何か思い出すように、歯切れの悪い返事をするあかね。


「リーデルの事を考えて遠慮してるなら、オレからも言うぜ」

「大丈夫。元々気が進まなかったし、でも言っちゃった手前、帰らないわけにはいかないしなぁって思ってたぐらいだから」

「そう、なのか?」

「うん」


目を丸くして尋ねる昶に対し、悟られないように笑顔を貼り付けて頷く。


「それに今帰ったところで、どうせ嫌な思いするだけだし」

「え?」

「言ってなかったと思うんだけど、ちょっと前にさ……新しい家族が出来たんだ」

「新しい?」

「うん。母さんが孤児の子を引き取って、養子にしたの」

「マジか。お母さんスゲー。つか初耳」

「だって今話したし」


そう言いながら、開いたままの教材を閉じて積み重ねる。


「その子、優しくて素直で」


何も言わず耳を傾け聞いている昶に、それ以上言っても良いのか迷うものの、思いとは裏腹に言葉を紡いでいく。


「そう。悪い子じゃないんだけどさ」


――でも。


「私、あんまり好きになれない」


.