桜空あかねの裏事情


ジョエルから与えられていた書物の中に、決して無かったわけではないが、大半は主に異能者の歴史や文化、性質や体質などの基礎知識とも言える内容の理解を深めるものであった。
しかし今回は異能者の由縁とも言える異能という能力を正しく使う為の知識であり、辿るだけの歴史と違い、記されているものを単純に覚えるのではなく、与えられた知識を自分なりに取り入れ、応用し使わなければならない為、予備知識があるあかね自身も当然ながら困惑していた。


「でもよ、駿センパイの言ってたヤツ?あれなんとなくだけど分かるかも」

「ホント?」

「なんつーか……オレの異能って言霊だけど、普段喋ってても何も起きねーじゃん?」

「うん」

「確かなことは言えねーけど、異能を使った時って、すげー傷付いたり怒ってたりしてんだよな」

「そうなの?」

「多分だけど。他の事は考えられないほど、そう思ってた気がする」


自身の経験を語る昶に耳を傾け、あかねは一人思案する。

――葛城さんは、異能を使うには強い思いが必要だと言っていた。
――実際、昶の話も聞いてもそう思う。
――けどそれだけじゃ、分からない。
――強い思いって言うのは、喜怒哀楽をはっきり示す事?
――……ううん、ちょっと違う気がする。
――示しすぎて逆に失敗しそう。
――それを上手く調整出来ればいいのかな。


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