ジョエルの名を聞いて唖然とすれば、その様子を見て駿は咳払いをして話し始めた。
「あまり良い印象はないが、彼の実力や知識は本物だ。君達の異能は、実例が少ないながらもよく書かれている。これほど緻密な資料は滅多にない」
手渡された書類を昶と共に見れば、性質や僅かなりとも過去のデータやジョエル自身の推測など、こと細かく書かれていた。
「なんつーか……すごくね?」
「うん。私もビックリ」
「流石は五指であり、リーデル不在のオルディネを守っていただけはあるということだな。加えて君達は、それほどまでに期待されているという事だ」
「期待っていうか、嫌味だと思いますけど」
そう言えば駿は一瞬困ったような表情を浮かべたが、すぐに言葉を返した。
「真意は掴みかねるが、少なくとも関心のない者の為にここまでしないと……俺はそう思うが」
「んー、そう言われるとそうなんですけど……」
関心の有無のみで判断するならば、駿が言っている事は間違いではない。
だがあのジョエルが、関心の有無のみで動く事はないだろう。
常にオルディネの為と先を見据えて、物事を判断しているのだ。
必ず何か他の目的があるはずだ。
「ともあれ今は、己の異能を深く理解し知ると共に強化を捗る。それに集中する事に努めよう」
「はい」
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