桜空あかねの裏事情



「陸人さん……」

「子供の事を気にしてるなら、焦ることないよ。義姉さんまだ若いんだから」

「ありがとうございます。そう言って下さるのは、陸人さんだけです」

「そんな事ない。兄さんだってそう思ってるよ。ただあのクソジジイ達がいるから表立って言えないだけで」


高貴な身分を妬む者も多くいるが、高貴であるが故の悩みもあるのだと、話を聞きながらギネヴィアは一人でに思った。
それと同時に驚いてもいた。
これほどまで他者を擁護する陸人など、今まで見た事が無かったからだ。

――ジョエルの言っていたことは
――この事かも知れないわね。



「つまらない話をしてしまいましたね。お茶を御用意致します」

「ありがとう。義姉さんもお茶しようよ」

「私もですか?」

「うん。会合があるとか言ってジジイいないし、侍女達もほとんど連れてっちゃったでしょ。幸い、ここにいるのは紀子さんや新入りぐらいだし」

「それはそうですが……でも……」

「久しぶりにゆっくり話でもしようよ。もし何か言われたら、ボクが言ってやるから」


その言葉が嬉しかったのか、はたまた安心したのか。
部屋の中から少しだけ笑い声が零れる。


「ふふ……分かりました。少しだけですよ」

「やった!義姉さん大好き!」


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