塀を越えて見えた景色は、散歩するにはやや広い敷地と平屋。
過去に二、三度ほど陸人に強引に連れられて訪れたことがあったが、改めて広い屋敷だと実感する。
「陸人の部屋は……確か、東の一番奥」
記憶を辿りながら、音を極力立てずに目的の場所まで向かう。
家主が留守にしているのか、はたまた運がいいのか。
辺りは静かで姿を隠さずとも、屋敷の者と遭遇する事は無かった。
「この部屋よね……」
迷いはあったものの、自力で目的の部屋まで辿り着く。
襖で閉ざされた室内を見る事は出来ないが、気配は感じるので、恐らく陸人はいるのだろう。
ギネヴィアはそっと襖に手をかける。
「はぁ!?兄さんはあの女と行ったの!?」
襖越しでも十分聞こえる驚愕を含んだ声に、動きを止める。
陸人がいるこもは確信したが、どうやら彼だけではないようだ。
「り、陸人さん。落ち着いて下さい」
「落ち着くとかの問題じゃないって!何で!?何で義姉さんじゃないのさ!」
話している相手は女性だった。
高くか細い声ながらも必死に彼を宥めようとしている。
だが驚きから次第に怒りを含んだ声色からして、陸人の怒りは頂点に達するほど彷彿と湧きあがり、聞く耳を持っていないようだった。
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