某所 玄関前
「相変わらず、でかい屋敷ねぇ」
戸松の街から消えたギネヴィアが、次に姿を現したのは高い塀に囲まれた家。
その全貌を見渡すことは出来ないが、間違いなく豪邸の部類に入るだろう。
それは同じくチーム・オルディネ所属する菊地陸人の実家。
御三家の一つ、菊地家の本邸だった。
「いるかしらねぇ……」
月に一度行われる恒例の会議で、ジョエルに下された命は二つ。
一つは今月末にあるランキング戦の対戦相手であるチーム・ソンブルの調査。
そしてもう一つは、数日前から館を出て所属者絶対参加の会議すら欠席した、実家に帰省中の陸人を呼び戻すこと。
前者は危険が伴うが、難易度で言うなら後者の方が圧倒的だ。
そう思うだけで、ギネヴィアは頭が痛くなるようだった。
ただでさえ自己主張の強い陸人が、説得するだけで首を縦に振ってくれるとは考えられない。
何か策を巡らした方がいいのかとさえ思ってしまう。
だが元はと言えば、所属者の意見を聞かず一人で勝手にあの少女をリーデルと宣言したジョエルが悪いのだ。
そう自分に言い聞かせて一息吐くと、ギネヴィアは高く聳える塀を、すりぬけるように越えた。
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