彼女の異能は朔姫や陸人のように自然系かつ攻撃的でなければ、アーネストのような探索に特化したものではない。
はたまた昶のような特殊な能力でもない。
対象とした人や者、または自身を一瞬にして別の場所へ移させる“瞬間移動”である。
数多ある異能の中でも該当する者が比較的多く、名を挙げられる代表的な異能の一つ。
一般社会に広く知られるほどの知名度を持つが、稀少性を優先する異能社会ではありきたり過ぎて過小評価されている。
それがギネヴィアの異能だった。
世間での評価は芳しくないが、使い勝手は良く何かと便利であり、ギネヴィア自身はそれなりにこの能力を好いている。誇りに思うほどに。
だがジョエルからして見れば、探せばいくらでも替えが効く代用品、はたまた使い勝手の良い駒ぐらいにしか思われていないだろう。
事あるごとにこき使われ、命が危ぶまれる任務でさえ一人で押し付けられることがあるのだから。
オルディネに所属する者達の多くが未成年であるが、それを差し引いても比べ物にならないほどの待遇。
しかし自分と同じ能力を持ち、かつもう一つ能力を持つ結祈は、ジョエルからまるで下僕のような扱いを受けている。
そう思うと、自分はいくらかマシなのかも知れない。
「どうであれ、やる事は変わらないわよ……ね」
現実に些か不満を抱きながらも、一応充実はしている。
ならば今は与えられた任務を遂行するだけ。
それにもしかしたら、状況は思いの外変わるかもしれない。
一人の少女によって。
ギネヴィアは一人そう思いながら、一瞬にしてその場から消え去った。
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