某所
「全く。冗談じゃないわよ」
ヴィオレットでの会議を終えた直後、ギネヴィアは早々に店を出て、プラティアという空間を抜け、愚痴を吐きながら戸松の街中を歩いていた。
「ホント面倒だわ」
あの男はいつもそうだ。
自身が撒いた種を理不尽にも他人に押し付け、後始末をさせる。
決して自分の手を汚さない。
しかしあの男は、口だけではなく実力も確かにある。
その証拠に、以前の任務で取り返しのつかない失態を犯した時、散々皮肉を浴びさせられたが、何も無かったと言わんばかりに彼が任務を代わりに遂行し、挽回する以上の切り返しで平然とやってのけた。
あの徹底ぶりと底知れない実力に、ギネヴィアは驚かされた上に感心すら抱き、そして味方であることを心強く思った。
しかしそれと同時に敵となった場合はとてつもなく恐ろしいとも思え、最終的には何とも言えない複雑さだけが残った。
それでも彼の独裁政治のような横暴ぶりに、不満がないわけではない。
今回のリーデル問題も例外ではない。
だがオルディネに所属している以上は。
実力主義の社会で生きる異能者である以上は。
文句の一つや二つさえも言えるはずもないのだ。
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