桜空あかねの裏事情


そう断言したジョエルは、再び俺を見遣る。
サングラス越しからでも分かるほどに、鋭い視線に思わず息を呑む。


「私が掲示する条件は異能の実戦指導。そしてリーデルになるまでの間、どんな事があってもお嬢さんを支持すること」

「了解した。彼女が指名しなければ、俺は今ここにいない。恩には報いるつもりだ」

「ならば最後にもう一つ」


ジョエルは懐に手を忍ばせ、あるものを取り出す。
そっと机の上に置かれたそれは、白く円形状の錠剤が入った瓶だった。


「これは…」

「制御剤だ。強いて言うなら、最新型のな」

「何?」


彼から発せられた言葉に驚き、思わず視線を向ける。
しかしジョエルは皮肉な笑みを浮かべながら、様子を伺っているだけで真意は悟らせはしない。
驚きと焦り、そして僅かな苛立ちを覚えはするが、この状況で流石に冗談は言わないだろう。
そう思いながら再び錠剤の入った瓶に視線を戻す。
確かに言われてみれば自分が服用しているものと、形は何ら変わりはない。


「これはとある知り合いから、私が君の為に取引した物だ」

「俺の為に?」

「君のような異能者にとっては必要不可欠な物らしいな。だが実際のところは個人差によるところが大きく、非常に使い勝手が悪いと聞く」


.