桜空あかねの裏事情


窘めるように朔姫に言い聞かせるジョエル。
いまいち納得してないのか、曖昧に答えて頷く朔姫。
アーネストとギネヴィアに有無も言わず、その様子を黙って見つめる。


「ちょっと!弊害って何よ!?」


大声で叫びながらまた振り返ったギネヴィアに、大袈裟な程に溜め息をつくジョエル。


「素直に言ったまでだが。将来有望である朔姫が、お前達のような下卑た大人になっては困るからな」

「ちょっと待って。それは私も入るのかな?」

「当然だ。いい年して定職に就いていない大人など、正に弊害の一種だ」

「それは聞き捨てならないかな。世の中には就職難と言う言葉があってね。あ、古い考えの君には理解出来ないのか」


笑顔を貼り付けたままアーネストは呟く。
その棘のある物言いをジョエルは決して見逃さない。


「……それは私に喧嘩を売っているのか?」

「そうだとしたら?」

「ならば、喜んで買うとしよう」

「ジョエルさん……!んッ」

「朔姫、ここは逃げるが勝ちだよ」


平静を保っていた朔姫が驚いて声をあげるが、素早く陸人が口を抑えて、耳元で素早く呟く。
出された提案に朔姫は静かに頷いて、二人は部屋を後にした。
その後ジョエルを加えた大人達の口論が飛び交い、激しく続いたのだった。


.