「はいはーい。そこまで」
気が抜けるような声が聞こえたと同時に、今にも振り下ろされそうだった沢田の腕を、瀬々が片手で掴み止めていた。
突然の第三者の介入に沢田は信じられないものを見たように吊り上がった目を、そしてあかねもまたこの場にいると思わず目を白黒させながら、両者とも瀬々に視線を向けている。
「桜空さんがあまりに遅くて、迎えに来たんスけど」
「ごめん。ちょっと立て込んでて」
「みたいッスね。だから気にしないで……って、そんな事より」
瀬々はあかねから沢田に視線を移す。
「もう十分っしょ?」
そう静かに言って、瀬々が掴んでいた沢田の腕を弾くように退けると、思いのほか力があったのか沢田はよろけて数歩後ろに下がった。
「なっ……なんだよ、お前」
「桜空さんの友達。話をちょいばかり聞かせてもらったんスけど、君って随分と傲慢なんスね」
「は…何言って」
「別にただの私見ッスけど。普段ならどうでもいいんスけどねぇ……でも女子を殴ろうとするなんて、軽蔑に値するよ」
飄々とした態度を崩さず、挑発的な言動も忘れず、威圧するかのように瀬々は一歩前へ出る。
沢田は一瞬たじろぎ、目線を泳がせたが、すぐに睨み返してきた。
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