桜空あかねの裏事情


旅館 ロビー付近



「教えてあげるよ。君の知らない昶をさ」


紡がれた言葉に特に動じる事はせず、ただ目の前に立つ沢田を見据える。
これから語られるであろう過去よりも、この少年の目的が一体何なのか。
あかねはそこに重点を置いていた。


「俺が昶と初めて会ったのは、小学一年の時だ」


その思案には気付くことのないまま、沢田はゆっくりと語り始める。


「初めて会った時、アイツは既に異能者だった。俺は異能者の血筋だったけど、能力は無くて。そん時は驚いたりもしたけど、尊敬もしてたんだぜ。異能者である事が、世間で何を意味するのかちゃんと分かってたし、立場も弁えてたからな」

「……」


広く認知されいるとは言え、現在でも異能者に対する忌避や差別がなくなったわけではない。
今から時を遡ったとしてもそれは同じ事で、もしかしたら現在よりその風潮の影響は、強かったのではないかと思う。


「俺達は話していくうちに次第に仲良くなって、何をするにも一緒だった。俺達は親友で、互いに互いを補っていく存在だった。中学に入るまではな」

「?」

「俺達が通っていた中学は地元より少し離れてた所為か、俺はともかく昶の事を知らないヤツが多くてな。アイツはすぐに受け入れられたよ」

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