調理場
「おそい」
日が傾き、空が赤く染まり出した頃。
並んでようやく回ってきた調理場に無事着いたが、材料を洗いに行ったあかねは一向に戻る気配はなかった。
「桜空さん、こういう時サボったりしないと思ったんスけど……」
「どうしたの?」
うなだれていると、飯盒を見張っていた朔姫とその隣に今日はあまり見掛けなかった昶の姿があった。
「お、二人とも!いいところに……!!」
「何かあったの?」
「実はー、桜空さんが野菜を洗いに旅館まで戻ったんだけど、一向に戻ってこないんスよ」
「え」
朔姫は驚きに声を漏らし、声には出さないものの昶もまた驚いていた。
「行ってからどのくらい経ってるの?」
「かれこれ三十分は過ぎてるよ。道は一本だし迷う事はないはずなんだけど……サボり?それとももしかして何かあったり?」
瀬々が冗談混じりに呟くと、朔姫は途端に不安に満ちた表情になる。
あかねは異能者で普通の少女ではない。
それどころか近い先、オルディネのリーデルになるかも知れない重要な人物だ。
そんな彼女にもしもの事があれば、誰よりも朔姫の上司でもあるジョエルが黙っていないだろう。
.

