「いたたたたたっ!ちょ、桜空さん!小さく抓らないで!」
「うるさい」
そう言いつつも、あかねは手を離す。
「いってぇ……いきなり何するんスか!話せたんだからいいじゃないスか!」
「なにを言うかと思えば。アンタのお陰で余計ややこしくなったわ」
「え、まじ?どの辺りが?」
驚く瀬々に、あかねは昨夜の事を話した。
昶と話している最中に中学時代の友人らしき人物と会ったこと。
昶が異様なまでに怯えていたこと。
苛つきながらも最後まで話せば、瀬々は困ったように苦笑した。
「それマジですか」
「ホントよ。おまけに今日は昶に避けられちゃってるし」
昨夜の一件があっても、あかねは変わらずに昶と話そうとした。
朝食時に昶の姿を探したが、彼は離れた席で寮生の一条達と朝食を取っており、食べ終わると逃げるようにその場からいなくなっていた。
その後も休憩時間などの合間に探したりしが一向に見つけられず、部屋まで尋ねたりもしたが、当の本人には会えずじまいにいた。
「昨日のヤツは仕方ないとして、何も私まで避けなくてもいいじゃん」
「それはそうッスけど、香住くんは意外と打たれ弱いからなぁ。それに他人をすごく気にするっしょ?」
瀬々の言う通り、昶は他人を優先する。
始めはそれを他者に対する気遣いと思ったが、今はそれが彼なりの自己防衛の手段である事を知っている。
でも。
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