床に投げ出されている本を棚にしまいながら、朔姫は呟いた。
尤もジョエルが暗い場所を好むのには、きちんとした理由がある。
「ジョエルさんの場合、体質がそうさせてるんじゃないかと」
「体質ねぇ……確かに光と対極だけど」
異能によって体質が変化する者がいると以前教えられた事があり、自分にもその節があるので、もしかしたらそうではないかと口にする。
「朔姫はよく人の事を見ているんだね」
「いえ、それほどでは」
「君はきっと素晴らしい女性になるよ」
「そんなこと……」
馴れた手付きで一つに束ねた髪を手に取って微笑むアーネスト。
朔姫は困った様子で、少し照れながら目線を逸らす。
「気をつけなさいよ朔姫。この男、見た目はこんな優男だけど変態で、中は相当黒いんだから。それに色んな事知り過ぎて、ジョエル並に侮れないわ」
その様子を見かねて、助け舟を出すようにギネヴィアが口を挟んだ。
「おやおや、随分と酷い事を言う。しかしそんな事を言っていいのかな?君の方こそ、そろそろ帰った方がいいんじゃないのかい?」
「はぁ?そっちこそ、いい加減フリーなんてやめたら?大した収入ないでしょ」
「それに関しては同感だな」
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