桜空あかねの裏事情


突然背後から聞こえた振り返れば、同年代らしき男子が驚きながらこちらを見ていた。
見掛けない顔で、恐らく同じ学校の生徒ではないだろう。
しかし昶に声を掛けたので、彼の知り合いかと思い尋ねようと向き直るが。


「あ………さ、わ…だ…?」


辛うじて相手の名前を呟いたが、昶のその様子は普段と明らかに違う。
時に見せる傷付き怯えた表情ではない。
いや、根本は変わらないかも知れない。
だが今は、それ以上に恐怖に満ちた表情をしていており、流石のあかねも愕然としていた。


「久しぶりじゃねーか!こんなとこで会えるなんて思ってなかったわ」

「っ………」

「雪子達から聞いたけど都会の学校に行ったんだって?いいよなー」

「……オレ、は…」

「本当にいいよな。そうやってお前はいつも………ん?」


怯えている所為か、会話さえまともに出来ない昶を、追い詰めるように話しながら一歩ずつ迫る男子。
まるでその反応を楽しんでいるかのような動きに、苛立ちと不愉快を覚えたあかねは、無理やり間に割り込み、昶を庇うように男子の正面に立った。


「なに?このちっちゃい子」

「昶のダチ。アンタこそ誰?」


敵意を含んだ瞳でそう返せば、目の前の男子は一瞬目を丸くして意地悪く笑った。

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