「え?何で?」
「そりゃあ……その方が話の幅も広がるじゃん?」
「お、確かにそうだ。さっすがダチ!」
苦し紛れの言い訳だったが、昶はそれで満足したようで顔を綻ばせている。
「山川さんの手料理とか食べてみてぇ」
「…手料理は分からないけど、ミルクティーぐらいは淹れてくれるかもよ」
黎明館の住人は自分を含めて、結祈特製のミルクティーを好む。
結祈自身も分かっているのか、どんな時でもいつも欠かさず用意されており、先日飲みに行こうと食堂へ行けば朔姫と鉢合わせたぐらいだ。
その時は確かジョエルに頼まれたからとか言っていた気がする。
相変わらず人使いが荒い。
何となくジョエルの姿を頭に思い浮かべたあかねは、今日知り得た事実を思い出す。
彼が秘密裏に昶を調べていること。
彼の名前を出した時の昶の変化。
話されるまでは黙っていようかと思ったが、本人にその気は無いのが分かり、あかねは自ら聞こうと決意する。
「あのさ昶、少し聞きたい事が……」
そう言いかけた時だった。
「あれ?もしかして昶じゃね?」
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