「例の女の子……新しく入ってくる子ですか?」
「そうだと思うよ。でなければ、ジョエルの趣味を疑うね」
「趣味というか、あの男は女に興味あるのかしら」
「ジョエルも男だよー?人並みにはあるんじゃないのー?」
陸人はそう言うが、恋をした事すらない朔姫にとってはあまりよく分からない話であり、さして興味もなかった。
その上ジョエルが独身なのか恋人がいるのかどうかすら、どうでもいいことなのだ。
「どうだろうね。彼の浮いた話を聞いた事はないから」
それはアーネストも同じだったらしく、朔姫は興味なさげに手に取った本を見る。
題名は禁断の秘術。
自室で実験紛いな事をしているとされるジョエルが、いかにも好きそうな書物であった。
ページを捲れば小さな字が羅列され、想像したくもない物騒な事柄が記述してある。
更には聞いた事も見たこともない単語が多くあり、これ以上読み進める気は起きず、静かに本を閉じた。
「あのさー今更だけど、この部屋って図書室だよね?」
床に散らばる書類を纏めながら陸人は不意に呟いた。
「本当に今更だね。そう、ここはジョエルのお気に入りの図書室」
「何でこんな暗いの?」
「それも今更だ。ジョエルは光があまり好きではないから。つまり明るいところ苦手なんだろうね。だから自分の部屋以外では、昼夜問わずサングラスをすると」
「とんだ陰険男ね」
「……ニュアンスが違う気がします」
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