桜空あかねの裏事情


「そう……良かった」


ホッとしたように朔姫が笑うと昶は顔を赤くする。


「んじゃー……い、行きましょうか」

「ええ。じゃあ二時間後に」


朔姫は昶に頷くと、あかねと瀬々に小さく手を振る。


「はーい。いってらっしゃーい」

「楽しんでね」


二人を見送ると、瀬々が不意に呟く。


「ちょっと意外だな」

「何が?」

「断られるかと思ったんで。桜空さん、俺のこと警戒してるから」

「そりゃあね……」


悟られないように水面下で探られていれば、誰だって心中穏やかではないだろう。


「とりあえず、あそこに座って話しません?」


瀬々が気遣うように指した場所は、自販機のすぐ側にあるベンチだった。
賑わってはいる旅館内だが、通りの影になってるので人通りは少ない。
あかねは言われた通り、素直にそこに座る。
瀬々も隣に座ろうとしたが、何か思い出したのか自販機の側に寄る。


「何か飲む?付き合ってくれたお礼に奢るよ」

「じゃあお言葉に甘えて……いちごオレ」


間をおいて答えれば、瀬々は了承したのか小銭を入れてボタンを押す。
出てきた自身の飲み物といちごオレを取り出して、あかねに手渡した。


「どーぞ」

「ありがと」


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