「ねぇジョエル。もう一つの依頼の事だけど」
結祈が覚悟したその時、この場の空気を一掃するような朗々とした声が響いた。
「あれ?結祈がいる。もしかして、邪魔してしまったかな?」
振り返れば、館に滞在中のアーネストがこちらの様子を不思議そうに眺めていた。
「いえ……」
「何かあったか?」
そんなアーネストに首を振る結祈だが、続く言葉が見つからず、代わりにジョエルが繋げるように言葉を返した。
まるで結祈の事など始めから存在しなかったかのように、アーネストに視線を向けている。
「ああ、実はね」
二人の様子を気にする事もなく、アーネストは部屋に入って明かりをつける。
この部屋の暗さに慣れてしまっている結祈には少し眩しく感じた。
「……眩しい。消せ」
「これが普通だよ。君以外の人達にはね。消すならカーテンを開けるけど」
「ふざけるな」
「それは残念。とても良い天気なのに」
気だるそうに椅子に寄りかかりながら、睨み付けるジョエルに対し、アーネストは爽やかな笑みを向けながらそう答えた。
やはり彼と対等に渡り合えるのは、旧友でもあるアーネストしかいないのではないかと思うほどに、言葉巧みに彼の皮肉をやり過ごす。
自分には到底そんな事は出来ないだろう。
ぼんやりとそんな事を思いながら、二人が話している内に、結祈は静かに部屋を去る。
その後ろ姿をジョエルが見ていた事など知らずに。
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