そう言って朔姫は、ジョエルの方を見遣る。
「君は相変わらず察しが良い。その素早い対応には感謝している」
「この程度、容易い事です。お気遣いなさらず、お話下さい」
朔姫は言い終わるとジョエルに向かって一礼すると、あかねが持っていたボストンバックを手に持った。
「荷物は先に持って行くわ」
「え?い、いいよ!自分で持てるから大丈夫だよ」
「でもその方が話が終わった後、早く動けるから」
朔姫は止める言葉も聞かずに、荷物を持ってすたすたと階段を降りていってしまった。
その後ろ姿を見ながらジョエルは口を開く。
「朔姫はあれでいて強情だ。まぁその点では、君とそう変わらないかも知れないが」
「……前置きはいいから、用件はなに?」
聞く気がないのか、聞きたくないのか。
あかねにしては素っ気なく、やや辛辣な言動だった。
「ふむ。今日のお嬢さんは随分、気が立ってるな。見ていて楽しい事この上ないが、本題に入るとしよう」
いつもと違う様子に、興味あり気なジョエルの余計な一言を、敢えて無視してあかねは頷き耳を傾ける。
「先日の、お嬢さんが見つけた男……葛城駿と言ったかな。一度、この黎明館に招いてみるのはどうだろうか」
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