「そう言えば山川さんの荷物は?」
「結祈が見ておくって言ったから、玄関に置いてある」
「そっか……って事は、結祈が玄関で待ってたり?」
「多分」
他愛のない話をして階段を降りようとした時、背後からドアの開く音が聞こえた。
「どうでもいい会話にさえ花を咲かせるとは……流石は思春期の少女達とでも言っておこうか」
「うわ、ジョエル」
突如聞こえた声に、あかねは明らかな嫌悪を含んだ顔で振り返る。
「随分な言い方だな。私がまるで幽霊みたいなじゃないか」
「真っ暗な部屋から出てくるんだし、そう思われても仕方ない気がするけど」
「フン。よく言う」
鼻で笑う程度で、差して気にしてないであろうジョエルにあかねは呆れながらも尋ねる。
「で、何か用?」
「用、とは?」
「だってこの時間はいつも寝てるでしょ?何かあるから起きてきたんじゃないの?それともただの徹夜?」
ジョエルは徹夜していない時、或いは何か用件がある時以外、朝は起きてこない。
実際にそうだし、彼と長年の付き合いである結祈やアーネストもそう言っているから間違いないのだろう。
それなのにこうして自分と話しているという事は、何かあるのだとあかねは直感にも近い確信を持っていた。
「用、ね。差し詰め、朝寝坊したお嬢さんの慌てぶりが、私に筒抜けとでも、言っておこうか」
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