桜空あかねの裏事情



陸人が扉を開けると、廊下と似たような装飾が施されてた部屋が現れる。
カーテンが閉められ、部屋の明りは限られている所為か廊下よりも暗く夜の闇を思わせる。
しかしそこには貴重なものから、どうでもいいものなど様々な種類の本が棚に並べられているが、そこはとても読書が出来る空間ではなかった。
また床には多数の書類が散らばっている。
部屋の主は足場の見通しすら、考えていないらしい。
そんな部屋を見て、三人はそれぞれの感想を胸に秘めて、中心にある机に腰掛けて軽やかに手を振り自分達を迎える青年を見るのだった。


「また一段と、豪華な顔ぶれだね」

「……どうしているんですか。アーネストさん」


名前を呼ばれた青年――――アーネスト・ウィンコットは、読んでいた本を片手で閉じて立ち上がる。
右目に僅かに掛かっている栗毛色の髪が揺れる。


「久しぶりだね、朔姫ちゃん」

「五日前に会ったばかりです」

「おや、そうだったかな?」


無表情で淡々と話す朔姫と、笑みを浮かべたままのアーネスト。
二人が会話をしているとはとても思えない程、対称的な温度差がある。


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