桜空あかねの裏事情


そこで会話が途切れ、沈黙が訪れる。
昶は何か言いたげだったが、俯いて逃げるように厨房に戻っていった。
その背を見送ったアーネストは、呆れ顔で隣にいるジョエルを見た。


「どんな事情か知らないけれど、何もあんな言い方しなくてもいいんじゃないのかい?」

「クックック……そうだったかもな」


喉を鳴らしながら、ジョエルはそう呟く。


「そろそろ新たな変化が欲しくなってきてね。丁度身近にいた動きやすい彼を、けしかけたまでの事」

「ああ……それで。やはり君は最悪だ」

「フッ……褒め言葉として受け取ろう」


――とはいえ、もうじき五月になる。
――いつまでも小娘だけにやらせていたら、
――期限までに集める事など出来ないだろう。
――かと言って頼られた事もない
――私が動くのも些か癪だが、
――水面下で動くのならば問題ないか。
――彼女は希望に満ちている。
――それをみすみす逃すほど
――私は愚かではない。
――ああ、全く。


「心底、楽しんでいるよ」


彼の言葉と共に、確かに動き始めている。


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