桜空あかねの裏事情


「お待たせしました。ご注文は………あ」

「おや」


顔を上げた少年とジョエルが、ほぼ同時に声を漏らす。
間に挟まれたアーネストは、不思議そうに二人の顔を交互に見る。


「知り合い?」


アーネストが様子を見かねて訊ねると、ジョエルは馴染みの嫌な笑みを浮かべた。


「まぁ……知り合いと言えばそうなるな。最も、話したのはあの時だけだったがな。香住昶くん」

「……あの時はどうも」

「こちらこそ。しかし、ここで働いてるとは驚いたな」

「昔からお世話になってるんで」


あかねから話を聞いているか、明らかに警戒した面持ちで昶は軽く一礼する。
するとすぐに接客へと作業を移す。
恐らく必要以上に関わりたくはないのだろう。


「ご注文は何になさいますか?」

「オリジナルブレンドとハニーミルクを一つずつ。あ、両方ともホットで」

「かしこまりました」


笑顔で受け答えをすると、昶は素早く立ち去ろうとする。
だがそれをみすみす逃すジョエルではなかった。


「ところで香住くん」

「………何ですか?」


間を空けて振り返る昶にジョエルは挑発的な笑みを浮かべる。


「学校でお嬢さんは元気か?」

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