見下すような視線は相変わらずだが、その声色には呆れと微かに優しさが混じっている。
もしかして気遣っているのだろうか。
確かにジョエルの言っていることは嘘ではない。
彼が自分を擁護してくれているからこそ、黎明館にいることが出来て、反対している者達に咎められることもないのだと。
生意気で尊大な態度を取りつつも、あかねは一応感謝はしている。
だがジョエルがそんな事を、いちいち口に出して言うはずがない。
「つまりそれって……ジョエルを敬えってこと?」
「ふむ。やはり頭は悪くないらしい」
口元だけの笑みと言い方から察するに、ジョエルが言いたかったのは単純に自分に敬意を払えということだった。
やはりひねくれた男である。
「それでお嬢さんは、今後私に敬意を払って接してくれるのかな?」
「え、無理だよ」
「即答か。念の為、理由は聞いておこう」
「だって……ジョエルってば、敬える要素ないじゃん」
街の喧騒の中、二人の間には一瞬にして沈黙が訪れる。
「……なるほど」
それだけ言うと、ジョエルはまた再び歩き出す。
先程よりも早いペースで。
「あっ。待って!待ってよ、ジョエル!」
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