「よくわかんねーけど、それ以上は近付くな」
あかねを庇うように前に出る昶。
直接的な知り合いでもないのに、詰め寄ってくる男の態度が気に入らなかったのだろう。
「部外者は黙っててもらいたいが……ん?」
まるで邪魔だという物言いと鬱陶しいと言わんばかりの視線を混ぜながら、男はサングラス越しに昶を見る。
すると男は何か気が付いたのか、思い出したかのように再び口を開いた。
「なるほど……見た事ある顔だと思ったが」
「は?」
「君もお嬢さんと同様に、非常に稀有で異端だということだ」
「え」
その言葉に、あかねの中にある事が浮かび上がる。
――まさか昶も……。
「っ……だから何だよ」
「さぁ……これといって言うことも無いが。ただ自分を抑制して生きていくのは、さぞ大変だろうなと思ったまでだ」
「!!」
男の言葉に昶は怯み、警戒から瞬く間に驚愕と恐怖の表情へと変わった。
「昶?」
「オレはッ……違う…」
「違う?そう思っているのは自分だけだろう」
何かを否定している昶を嘲笑うかのように、男は突き刺すような言葉を吐き捨てる。
そして自分を未だ警戒を含んだ瞳で見るあかねに対して、不遜に笑った。
「今日は顔を見に来ただけだからな。用件はまた後日、話すとしよう」
「……結構よ」
「強情なのは嫌いではない。ではまたな、お嬢さん」
.

