桜空あかねの裏事情


そう思った瞬間。



――……久しぶり………また会えたね――



「!?」


不意に内から浮かび上がった言葉に、あかねは驚いて男から離れて後退る。
それによりバランスを崩し掛けるが、それに気付いた昶が後ろから支える。


「大丈夫か!?」

「う、うん」


昶の言葉にあかねはハッとして、自分の胸に手を当てる。

――何?今の……。

自分の思考とは全く別の何かが、そう感じてた言葉。


「ふむ……変わってないか。10年も経てば何か変化があると思っていたのだが」


あかねの反応を見て、何か思案しながら呟くような男。
男の素顔は既にサングラスによって隠されており、先程の事が一瞬の出来事であると知ると同時に、男に対して未だ残る既視感に戸惑っていた。


「あなた一体……」

「言ったはずだ。怪しい者ではないと。まぁそれは……君にだけかも知れないが」


――私だけ?さっきから何言ってるの?

あかねは疑いの眼差しを男に向ける。
その様子を男は見つめると、静かに口を開いた。


「……異質に疑心を孕む。どうやら君は、自分もまた異端であるという自覚が、まだ足りてないようだな」

「!?」


変化は激変だった。
今まで何とか保ってきた仮初めの冷静さが剥がれ落ち、あかねの瞳が大きく見開く。
誰が見ても動揺している事が分かるほどに。


「な、にを言って……」

「言っただろう。会った事があると。私は君を知っているよ。桜空あかね」


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