桜空あかねの裏事情


――そんなものだろうか。

あかねが山川朔姫と話したとは言え、軽い挨拶程度の内容。
更に昨日の一件から個人的には話しづらい状況になりつつある。
だが昶の場合は、クラスメートとして話せば良いのではないか。


「話してみれば?クラスメートなんだし」


気軽に尋ねたつもりだったが、昶は驚愕とした表情を浮かべると、勢いよく手を前に出し大袈裟なほど横に振った。


「絶対無理!大抵ノリで話すけど、山川さんはそういうの通じなさそうじゃん!」

「そうかなぁ……」


そう呟いた時だった。


「桜空さん」


自分を呼ぶ声が聞こえて振り向けば、驚いた事に今話題に出ていた山川朔姫その人の姿があった。


「山川さん!」


あかねは小走りで、入り口にいる朔姫の元に駆け寄る。


「どうしたの?」

「姿が見えなかったから探しにきたのだけれど……邪魔だったかしら?」


朔姫は昶に一瞬、視線を移し気まずそうに訪ねた。


「そんな事ないよ。サボってるだけだし」

「そうなの。でも……彼氏なんでしょう?」

「彼氏?誰が?」


疑問が浮かび首を傾げて尋ねてみれば、朔姫もまた不思議そうな顔をしていた。


「香住くん。桜空さんの彼氏じゃないの?」

「「は!?」」


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