桜空あかねの裏事情


「ありがとうございました」


店員の声を背に聞いて、店を出たあかねと昶は人通りの少ない道を歩いていた。


「色々話せて楽しかったな!」

「そうだね」

「学校始まったらまた寄り道しようぜ!……ってまだ同じクラスになれるか分かんねーけど」


クラス発表がある入学式はまだ少し先だ。
だが、それは果たして関係あることだろうか。


「同じクラスになれなくても、寄り道は出きるよ。私達知り合いだし」

「だな!つーか知り合いじゃなくて友達だろ!」


――あ、それもそうか。


「そうだ。友達。だからクラスは関係ないよ」


きっぱり言うと、何故か昶は目を丸くして唖然としていた。


「あかねってさ……何か格好いいよな」

「何が?」

「まぁ色々と。そう言えば、あかねも常磐線だよな?」


視線を泳がし話を逸らされた気がしなくもないが、とりあえずあかねは頷く。


「うん。上野方面だけど」

「んでオレは土浦方面っと。真反対だな」

「でも駅までは一緒だよ」

「そうだな!」



駅までの道のりを歩き続け、また一歩足を踏み入れたその時だった。


「失礼、お嬢さん」


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