大徳高校
登校時間に何とか間に合ったあかねは、LHRと言う名の一限と二限を無事終えた。
現在は三限の校内見学の真っ只中だったが、何故かあかねと昶は教室で話していた。
謂わばサボりである。
「いやー!それにしても朝は凄かったぜ」
陽気な昶の声が、自分達しかいないこの教室に響く。
「遅刻するからって、塀を登って来ねぇって。あかねはやっぱスゲーよ」
「いや、それほどでも……というか、つい」
黎明館から形振り構わず走ってきたあかねは、学校の塀に沿って校門まで向かっていた。
しかしこの時、既に間に合う時間帯ではなかった。
遅刻など普段なら厭わないが、入学式後の初日からするのは不本意だったあかねは、辺りに人がいない事を確認すると登れないほど高くはない塀を登って、学校の敷地内に入った。
偶然にもその光景を教室から見ていたらしい昶には、大笑いされてしまった。
「ついでやるのがスゲーって」
「明日から、もうちょい早めに起きるわ」
あかねはそう固く決意したのであった。
「んで、旧寮の生活はどうよ?」
「ああ、それが――」
昶に昨日の出来事の一部始終を話し始めた。
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