彼女が去った後、入れ替わるようにアーネストが食堂に入ってきた。
「やぁおはよう」
「おはようございます。ミルクティーを用意しますね」
「助かるよ」
結祈から一番近い席に座ると、何やら愉しげに話し始めた。
「さっき廊下で面白いものを見たよ。物凄い勢いで駆け出していくあかね嬢。声を掛けたけど、残念ながら気付いて貰えなかったよ」
「仕方ありません。この時間帯だと、遅刻の可能性が高いですからね」
時計を見れば八時五分。
そろそろ大人達が起きてくる時間だと、会話を交わしながら結祈はふと思う。
「学生とは大変なものだね。ちなみに頬が膨らんでいた。まるでハムスターみたいだ」
「苺を四粒も入れてましたからね。自分も驚きました」
感嘆しながら言う結祈に、アーネストはただ頷く。
「そして片手には兎型のリンゴか。彼女、意外と食い意地張ってるのかも知れないね」
そんな会話が繰り広げられている事など、あかねは知る由もない。
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