桜空あかねの裏事情


「おはようございます。あかね」


食堂のドアを開けると、結祈が笑顔で出迎えた。


「おはよう!結祈」


笑顔で応えると、一番近くにある席に座った。


「なかなか来られないので、部屋にお伺いしようと思っていたところでした」

「ごめん。目覚まし遅めにセットしてて」

「構いません。朝食の支度は出来ています」


素早い手付きで、朝食をあかねの前に置く。


「ありがと!いただきまーす!」


トーストに目玉焼きにウィンナーにサラダとミニトマト。そして苺と林檎のフルーツ。
適量かつ豪勢だが、小食のあかねにはどちらかと言えば多い方だった。

――美味しい。しかし食べれるのか?この量。

あかねはそう思いながら、トーストに塩をかけた目玉焼きを乗せて口に運ぶ。


「ミルクティーも用意してますが」

「あー……時間無いからいいよ」


現在の時刻は午前八時二分。
徒歩で十五分のところにある学校に遅刻しないで行くには、非常に際どい時間帯であった。


「あ!さっきジョエルに会ったんだけど」

「ジョエルにですか?」

「うん。それで結祈に“砂糖の量が少なすぎる”って言ってくれとか」

「……またですか」


言伝を伝えると、結祈は誰が見ても分かるほど呆れていた。
それを横目に、トーストと目玉焼きを水で流し込んで食べる終わると素早く席を立つ。
そしてウィンナーを一本食べて、更に苺を口の中に入れる分だけ入れて、林檎を一つ持ち鞄を手に取る。


「ふぁあ、ゆひぃ!むむむっ!」

「はい。いってらっしゃいませ」


結祈の言葉を聞かずに、あかねは勢い良く出て行った。


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