皮肉と嫌みを合わせて言うジョエルに僅かながらも苛立ちを覚えるが、朝から口を挟む気にはなれず歩き出す。
すると何故かジョエルからまた声を掛けられる。
「行くのか?」
「まだ。朝食食べてないから食堂に行く」
「なら結祈がいるな。奴に砂糖の量が少なすぎると言っておいてくれ」
「……自分で言えば?」
あまりに稚拙な言伝に、そう言えばジョエルは鼻で笑った。
「生憎、まだ起きる時間ではないのでな。それに結祈はああ見えて、私の話にあまり聞く耳を持たない。お嬢さんから言った方が有効だ」
「つまり面倒なのね」
呆れて言えば、ジョエルは挑発的な笑みを浮かべる。
「どう取るかは君の自由だ。ちなみに現在の時刻は七時四七分。朔姫はとうに登校しているぞ。ではな、お嬢さん」
言いたい事だけ言うと、ジョエルは追随を許さないかのように自室に入りドアを閉めた。
嵐が過ぎたかのように静寂が訪れた廊下の中で、あかねはやはり勝手な奴だと内心毒づいて再び歩き階段を降りていった。
.

