「昶のとこは?」
「ねーちゃんと妹」
「お、見事なサンド」
「ははっ確かに!でもねーちゃん怖いんだよ」
それから昶の話を聞いてみると、自分の兄弟とは比べ物にならない程に愉快で、話を聞くだけでも温かみのあるものを感じた。
「良いお姉さんと妹ちゃんだね」
「まぁな。周りの奴らと違って差別しないしな」
――差別?
穏やかではない言葉を聞いて、あかねは昶を見る。
明るい茶髪に平均的な身長。
顔も騒がれるほどでないにしろ、悪くはないと思う。
内面も知った限りでは人懐っこい性格のはずだから、ある意味扱いやすいだろう。
どこを取っても差別される要素などなく、不思議に思ったあかねは聞こうと口を開くが。
「そろそろ行こうぜ」
「あ……うん」
うまくタイミングが掴めず、仕方なく立ち上がる。
その時、自分と差ほど変わらない年齢であろう女子とすれ違った。
「ねぇ知ってるー?隣のクラスにいた鈴木さん」
「え?誰だっけ?」
「ほらあの地味な子」
「あぁ、確かあの眼鏡の子?」
「そうそう!あの子、噂で聞いたけど異能者らしいよ!」
「異能者?そんなのうちの学校にいたんだ。ビックリ」
「だよねぇ!つか、異能者とか気持ち悪いんだけど」
「ホントね。同じクラスにならなきゃいいけど」
「言えてるぅ!キャハハ!」
異能者。
彼らは昔から存在したらしいが、その呼び名が誕生したのはほんの少し前であり、簡単に言えば世間一般で言う超能力を使える者である。
迫害の対象でもあった以前に比べ、近年はその存在が公になり受け入れられつつあるが、未だにその存在を差別したり批判する者達は少なくなかった。
「……ああいうのって、良くないよな」
話を聞いていたのだろう。
前を歩いてる昶の表情は見えないが、声色からして少なからず不満があるように聞こえた。
「ソイツが聞いてたらとか、自分がその立場になったらどう思うとか考えないのかよ」
「……」
振り返った昶を見上げれば、その表情はどこか悔しそうで傷付いたようにも見えた。
彼も誰かにそんな風に言われた事があったのだろうか。
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