桜空あかねの裏事情


昶が見つけた席に二人は座った。
それから注文した飲み物を飲みながら、中学のことや好きなことなど色々な事を話していた。
端から見ればカップルに見られなくもない光景かも知れないが、当人達は今日が初対面の学生である。


「なぁなぁ!あかねって何人兄弟なんだ?」

「ん、いきなりどうした?」

「いや、さっき兄貴がいるって言ってたろ。ちょっと気になってな」

「ふーん……」


兄弟達の事を聞かれると微塵にも思っていなかったあかね。
どこから切り出そうか考えていると、昶が顔色を伺うように口を開いた。


「もしかして、あんま触れちゃいけない話題だったか?」

「別にそういうわけじゃないけど……」


曖昧な言い方をするあかねだが、昶の言うとおり無理強いはしないが、出来れば触れて欲しくない話題ではあった。


「驚くかも知んないけど、うちは六人兄妹なんだ」

「六人!?へぇー!お母さん頑張ったな」


――関心するとこはそこか。

確かに周りに比べれば多い方だ。
父がどうしても女の子が欲しいと母を説得したなどと、兄達から聞いたことはあるので、関心する点としては間違ってはない。


「オレは三人姉弟の真ん中だけど、あかねは?」

「四番目かな」

「じゃあ下の方なんだな」

「うん」

「でもそんだけいると賑やかだし、兄弟達とも仲良いだろ」

「…………」


どんな答えであれ、普通なら答えられるであろうその質問に、あかねは答える事ができなかった。
それに関しては何とも言えないのである。


「あかね?」

「ん?ああ……」


不思議そうな顔をする昶に、あかねは軽く笑って間を誤魔化す。


「んー仲良いかは分かんないかなぁ。年が離れてるからさ」

「そっか。離れてんのか。うちと同じだな」

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