「おい、悠斗!! 勝手なことすんな」

「巧・・・」

「オレも、雪が好きだから複雑」


 私を、お兄ちゃんから遠ざけて、巧くんは自分の腕の中へ私を納める。

  
 助けてもらった・・・なんて思ったのに


 何で、こういう状況に。



「雪。好き」

「巧く・・・」

「I love you」

「っ・・・」


 歌うかのような、キレイな英語の発音に聴き惚れる。


 そういえば・・・バンドでボーカルって言ってた。


 だから・・・こんなカッコイイ声してるのかな。



「雪・・・」


 歌うように私の名前を呼ぶ巧くんの声が、あまりにもカッコよくて。

 色っぽくて。


 赤面する。



 はっ・・・。


 腕の中にいる状況をどうにかしなくちゃ!!


 
 巧くんの腕から逃れようとバタつくが、これが上手くいかない。


 がっしりした巧くんの腕は、強くて動かない。



「雪・・・愛してる」


 上を向けば、巧くんの顔。


 わぁぁぁぁ!!