「オレと付き合え。雪」

「っ・・・・・・」


 恭ちゃんに、初めて雪って呼ばれた。


 恭ちゃんは、私のこと・・・お前とかしか言わないから。


 名前で呼ばれたの、今が初めてなんだ。




 それで、恭ちゃんの本気度が分かる。


 抱きしめられて、頭を恭ちゃんに手でおさえられた。

 そして、キスをされる。


「・・・付き合え」

「・・・付き合います」


 もう、お手上げです。


 怖かったけど、無愛想だったけど、トンガリボーイだったけど。


 本当は、好きだったよ。


 必死で火傷を心配してくれたりもしたし・・・人を傷つけることはしなかった。


 今思うとね。



 恭ちゃんが周りにうざいとか言って孤立してたのは、人を傷つけないためだったのかな。


 うざいよりもヒドイ言葉を言ってしまいそうだったから、私を遠ざけたかな。



 でも、もうこんな近くにいるよ。




「恭ちゃん・・・ケーキつまみ食いしたでしょ」

「あぁ」


 悪びれる様子もなく、むしろ誇らしげな恭ちゃんの顔に思わず笑った。

 愛しく思った。



 キスしたときの生クリームの味は、私がつまみ食いしたときと同じだった。






 *END