『・・・・・・あー、はい。もしもし』

「お兄ちゃん」

『雪?』

「うん・・・」

『どうした? 電話なんて珍しい』

 いつもと変わらないお兄ちゃんの声に安心して、その場に思わず座り込んだ。

 足の力がグっと抜けたみたい。

 
「お兄ちゃん・・・いつ、帰ってくる?」

『今、仕事終わったから。今帰るけど』

「早く・・・帰って、きて」


 泣きそうな衝動を必死におさえて、グっとガマン。


『・・・どうした? 声、震えてるけど・・・』

「あのね・・・友達を家まで送ったけど、帰り道が意外に暗くて・・・怖くて。帰れなくなっちゃった・・・」

 情けないのと、不安だったのが涙になって溢れそうで。

 私は、顔を歪めて下唇を噛んだ。



『・・・今どこ?』

「えと・・・優香の家の近く」

『その子の家、分かんないけど・・・。近くに何かない?』

「えと・・・」


 力なくなった足を必死に立たせて、周りの建物なんかをキョロキョロする。

 家ばっかりで・・・特に特徴的なモノが見つからない。


 あ・・・。


「公園がある」

『何公園?』

「そういう看板とかないから・・・分かんない。えと・・・滑り台しかない公園」

『・・・・・・分かった』

「待ってる・・・来て、ください」