「ねぇ、優香」

「ん?」

「優香って・・・料理上手い?」

「・・・上手いかどうかは分からないけど、好きでけっこうするよ」

「次の土曜日・・・料理教えてくれないかな」

「何で?」

「・・・ちょっと、色々」

「まぁ、いいよ。何作るの?」

「・・・オムライス」

「わかったー。材料とか一通りそろえといて!」

「うん」

「で、理由は?」

「・・・いつもお兄ちゃんにご飯作ってもらってばっかだから・・・たまには私が、みたいな」

 私は、お兄ちゃんに作ってもらったお弁当をつつきながらそう答えた。

 といっても、私なんかが作ってもお兄ちゃんのには匹敵しないけどさ・・・。

 
 フォークに刺した卵焼きを見てそう思う。

 こんなにキレイに卵焼きできないし・・・。


「雪のお兄さんって料理上手いよねー」

「だよね」

「いつもその弁当見せられちゃ、そう思うわ」

「私、朝・昼・夜。全部お兄ちゃんのご飯なんだけど・・・」

「羨ましいー!!! ね、いつか雪の家泊まりに行かせてね!」

「うん・・・」 

 優香が家に泊まりにかー。

 何だか楽しそう・・・。

 恭ちゃん、優香にもウザイとかいうかな・・・。


 そんな光景を想像して、思わず笑いそうになった。


 前には泣いたこともあったようなウザイって言葉も、今では慣れてるし。

 むしろ、言われると安心すらしてしまう。

 おかしいな、自分。


 あの、火傷事件から・・・恭ちゃんを見る視点が何か変わったんだよね。