カップに入っていたコーヒーがひざにかかって。スウェットをひざからドンドン濡らしていく。

 入れたてだったのでめちゃくちゃ熱い。


 あー・・・じゅうたんにも零れちゃった・・・。


「ごめんなさいっ。その・・・コーヒー零しちゃって、じゅうたんにも零しちゃって・・・」

「アホ!!! そんなことよりお前のほうが優先だろうが!」

 聞いたことないような鋭い声が耳元でして、ガバっと抱き上げられた。


「え、え!?」

 動転している私にも恭ちゃんは、お姫様抱っこ状態で私をお風呂場に運ぶ。


 そして、シャワーを冷水状態で私のひざにスウェットの上から当てた。


「火傷が残ったら・・・どうすんだよ」

「・・・・・・」

 冷た・・・。

 ていうか、恭ちゃんが・・・こんなことしれくれるなんて。


 しかも・・・お姫様抱っこしてくれたし。

 思い出すと少し恥ずかしくなってドキドキして、嬉しくなる。

 無愛想だけど・・・優しいんだよね。

 慰めたりしてくれるし。


 こういう優しさ・・・弱いんだけどなぁ。


「・・・恭ちゃんは・・・平気だった?」

「は? お前何言ってんの。平気だったけど・・・」

「ならいいや」

「何言ってんの?」

「・・・だって、モデルさんが火傷なんかしたら大変でしょ」

 無愛想で、いくらムカつくっていっても。


 恭ちゃんは私のお兄さんで、家族で。


 大切なんだ。


 だから、ケガして欲しくない。

 そのせいで仕事をダメにして欲しくない。


 だから・・・私の火傷だけでよかった。