水でも飲もうかとリビングに行くと、恭ちゃんが1人でテレビを見ていた。
ソファに座って、相変わらずの無愛想で。
「・・・お前さ、コーヒー入れてくんない?」
「・・・私ですか?」
「お前以外にいねぇだろうが」
確かにそうだけどさ。
お前は・・・固有名詞じゃないんだけど。
そんなことを不満に思いながら、私はカップを用意してコーヒーを入れていた。
そういえば、ここの家のキッチンはキレイだ。
使うのがお兄ちゃんだけだからだろう。
他の人は、料理はしないし。
私もしないんだけどさ・・・。
「はい・・・恭ちゃん」
「・・・どうも」
「熱いから気をつけてください」
「あぁ」
恭ちゃんは私の手からカップを受け取ると、お礼もそこそこにカップに口をつけた。
私は、特に意味もないけど恭ちゃんの横に座る。
そして、テレビに視線をやった。
やってる番組は、刑事モノのドラマ。
恭ちゃん・・・こういうのが好きなのかな。
「恭ちゃんって、こういうドラマ好きなの?」
「・・・・・・さぁ」
曖昧でどうでもよさそうな返事に、軽くイラっときた。
だけど、いつもこんな調子だしなぁ・・・。
無愛想の隣では、何だか空気が気まずくて・・・。
翔ちゃんが帰ってくるのを玄関で待とうかなって思って立ち上がろうとしたとき。
ゴンっとひざに衝撃。
テーブルに足をぶつけたらしくて、テーブルに乗っていたカップが傾いた。
「熱っ!!!」

