「翔ちゃっ・・・」
「お願い。今日だけは雪はオレの彼女ってことになって」
「っ・・・・・・」
元はと言えば・・・私が翔ちゃんに彼氏役を頼んだんだし。
ここで中途半端に終わらせるのも・・・。
翔ちゃんが・・・そうお願いするなら。
今日は・・・私は翔ちゃんの彼女です。
返事をするように、私は握られている右手に力をこめた、
その私の仕草に、翔ちゃんはピタっと立ち止まった。
そしてゆっくり振り向いて・・・
「それって、YESって解釈していいモノ?」
「・・・YESです」
「ん。ありがと。雪」
翔ちゃんはそう言うと、ニカっとした笑いでもなくて、なんていうのかな・・・。
目尻をキュっと下げた優しい笑顔をした。
何かがキュっとなった。
そして、手を離すのがおしいなんて思ってしまって。
私は翔ちゃんに引かれるままになっていた。
「・・・近いね」
「何が?」
「席が」
映画館の席は、けっこう近いもので。
手が触れてしまう距離。
「・・・・・・今日の雪。可愛い」
「いきなりだね」
「・・・見たときから思ってたけど。雪が遅刻したから話しそこねた」
「う・・・・・・」
「・・・攻めてないよ。可愛いって言いたかった」
「・・・翔ちゃんもカッコイイけど」
翔ちゃんの私服は、今日見たのが初めて。
カッコイイと思った。
素直にカッコイイと思って、素直にキュンっとなった。
本当だよ?

