八木さん家の5人兄弟。


「翔ちゃっ・・・」

「お願い。今日だけは雪はオレの彼女ってことになって」

「っ・・・・・・」

 元はと言えば・・・私が翔ちゃんに彼氏役を頼んだんだし。

 ここで中途半端に終わらせるのも・・・。

 翔ちゃんが・・・そうお願いするなら。


 今日は・・・私は翔ちゃんの彼女です。


 返事をするように、私は握られている右手に力をこめた、


 その私の仕草に、翔ちゃんはピタっと立ち止まった。


 そしてゆっくり振り向いて・・・


「それって、YESって解釈していいモノ?」

「・・・YESです」

「ん。ありがと。雪」


 翔ちゃんはそう言うと、ニカっとした笑いでもなくて、なんていうのかな・・・。

 目尻をキュっと下げた優しい笑顔をした。

 
 何かがキュっとなった。

 そして、手を離すのがおしいなんて思ってしまって。

 私は翔ちゃんに引かれるままになっていた。


「・・・近いね」

「何が?」

「席が」

 映画館の席は、けっこう近いもので。

 手が触れてしまう距離。

「・・・・・・今日の雪。可愛い」

「いきなりだね」

「・・・見たときから思ってたけど。雪が遅刻したから話しそこねた」

「う・・・・・・」

「・・・攻めてないよ。可愛いって言いたかった」

「・・・翔ちゃんもカッコイイけど」

 翔ちゃんの私服は、今日見たのが初めて。

 カッコイイと思った。

 素直にカッコイイと思って、素直にキュンっとなった。


 本当だよ?