八木さん家の5人兄弟。


「じゃぁ・・・行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「っ・・・・・・」

「わっ」

 お兄ちゃんの方に引っ張られて、ギューっと抱きしめられている。

 段差がある玄関で、引っ張られた私はお兄ちゃんにもたれる感じになっている。

「・・・なんか。翔じゃないけど・・・行ってらっしゃいって言われるのいいな」

「え・・・」

「行ってらっしゃいも、おかえりも、ただいまも・・・雪が言うと全部新鮮で可愛い」

「・・・お兄ちゃっ・・・」

 私の脳は低スペックらしく、今の状況を処理しきれずにいた。

 お兄ちゃんの声が近くで響いて。

 頭がクラクラして。


「・・・もう行く。次こそ行ってきます」

「うん・・・・・・」

 体をスっと離されて、何事もなかったかのようにニコっと笑うお兄ちゃん。

 そして、ドアの向こうに行ってしまう。

 私は、その場にへなへなと座り込む。


 そのですねぇ・・・兄妹だけど。

 兄妹になってからそんな・・・一週間ぐらいしかたってないし。

 だから・・・そのー・・・スキンシップ的なのはもう少し後のほうが嬉しいんですけど。


 
 ・・・何か、長男って力が強いのかな。

 恭ちゃんよりも、お兄ちゃんの方が腕が少しガッシリしてる・・・。

 
 あぁ、何比較してんだ、自分。


「って・・・あと30分で待ち合わせ時間だ」

 私は携帯で時間をチェックして、男物だらけの靴のなか、浮いている女物のショートブーツを手にとって足を入れた。

 
 兄妹なんだから・・・わざわざ映画館前で待ち合わせしなくていいと思うけど。


 よほど・・・恋人っぽくしたいらしく、待ち合わせしてたほうがそれっぽいだろって・・・。


 私・・・引っ越してきたばっかなのに。

 この辺の地理ダメダメなのに。

 
 電車とかどこで降りたらいいか微妙なんだけど・・・。