「・・・おかしいかな」

 前の家からわざわざ持ってきた全身鏡で、全身を映して服がおかしくないかな・・・なんてチェック。

 ・・・ちょっと丈が短いかな。

 お気に入りのワンピースのすそを握って、鏡とにらめっこ。

「雪・・・支度できたか?」

「あ、うん。いいよ。お兄ちゃん」

 私はドアを開いて、お兄ちゃんにOKを出す。

「・・・・・・」

「あ・・・おかしかったかな」

「・・・私服って破壊力高ぇな・・・」

「え?」

「い、いや。・・・似合うよ。可愛い」

「よかった」

 お兄ちゃんがそう言ってくれるのなら、その言葉を信じよう。

 
「じゃ、オレの部屋来て。ドライヤーとか、コテとか・・・色々オレの部屋にあるから」

「お兄ちゃんの部屋入るの初めて」

「まぁ、普段特に誰も入れないけど。初めてとか言ってるけど、面白いモノないよ?」

「きっと面白いよっ」

「何の根拠があって・・・」

 お兄ちゃんが少し困った顔をドアノブをひねった。

 
 やっぱり兄弟は似るらしい。

 恭ちゃんと似たような感じ。

 モノトーンでシンプルな部屋だ。


 違うのは、美容師の専門の道具とかがたくさん置いてあったり、あの・・・髪の毛がある首だけマネキンが棚に並べられているところだろう。


「・・・1人部屋なんですね」

 1人分のベッドを見て、そう解釈。

「ん。まぁ。巧は時々ギター弾いたりするから、巧の部屋だけ防音だし。オレと一緒ってのも、狭くない?」

「そっか・・・」

「で、何か面白いモノあった?」

「これ・・・」

 恭ちゃんの質問に、私は首だけマネキンを手に取る。

 あの、マンガの中で見た美容室とかに置いてあるモノだ。

 実物を手に取ったのは初めて。


「・・・・・・そういうの、女は怖いっていうもんじゃないの?」

「平気」

「変なの」