「あのさぁ・・・雪」
「何ですか? 巧くん」
これはチャンスだといわんばかりに、私は翔ちゃんの撫で撫でから逃げる。
イヤとかじゃなくてね。
ずっと撫で撫でされてるのも恥ずかしい、照れるし。
・・・たえれなかったからから。
「翔をタメ語なら、これからオレらのことタメ語で。翔だけタメ語ってのもおかしいし」
「・・・了解ですっ」
「それは敬語。だけど、これから慣れて」
「うん・・・?」
「そうそう」
「へへっ・・・」
今思ったら・・・巧くんと翔ちゃんの笑った顔は似ている。
八重歯があるか、ないか。
それだけ。
笑うと途端に子供らしくなっちゃうのも、甘えたい衝動に駆られるのも。
甘えたい・・・?
いやいや、それはだね、その・・・お兄さん的な包容力が笑顔に出るから。
みたいな意味であって・・・。
好きとかじゃない。
そうだったら超ブラコンじゃんかー!
「あ、雪」
「ん?」
「日曜出かけるなら、悠斗に髪・・・やってもらいなよ」
「お兄ちゃんに?」
「は、巧。なんで・・・」
「いいだろ。妹のお出かけのために妹を可愛くしてやるとか」
「・・・翔と一緒に出かけるっていうのが不本意なんだよ」
「何か言った?」
「別に」
「お兄ちゃんが・・・やってくれるの?」
少し伸びた髪を両手でキュっとつかんで、お兄ちゃんのほうを向く。
お兄ちゃん、美容師だって言ってたから・・・上手いんだよね。

