八木さん家の5人兄弟。


「あのさぁ・・・雪」

「何ですか? 巧くん」

 これはチャンスだといわんばかりに、私は翔ちゃんの撫で撫でから逃げる。

 イヤとかじゃなくてね。

 ずっと撫で撫でされてるのも恥ずかしい、照れるし。


 ・・・たえれなかったからから。


「翔をタメ語なら、これからオレらのことタメ語で。翔だけタメ語ってのもおかしいし」

「・・・了解ですっ」

「それは敬語。だけど、これから慣れて」

「うん・・・?」

「そうそう」

「へへっ・・・」


 今思ったら・・・巧くんと翔ちゃんの笑った顔は似ている。

 八重歯があるか、ないか。

 それだけ。

 
 笑うと途端に子供らしくなっちゃうのも、甘えたい衝動に駆られるのも。


 甘えたい・・・?

 いやいや、それはだね、その・・・お兄さん的な包容力が笑顔に出るから。

 みたいな意味であって・・・。


 好きとかじゃない。

 そうだったら超ブラコンじゃんかー!


「あ、雪」

「ん?」

「日曜出かけるなら、悠斗に髪・・・やってもらいなよ」

「お兄ちゃんに?」

「は、巧。なんで・・・」

「いいだろ。妹のお出かけのために妹を可愛くしてやるとか」

「・・・翔と一緒に出かけるっていうのが不本意なんだよ」

「何か言った?」

「別に」

「お兄ちゃんが・・・やってくれるの?」

 少し伸びた髪を両手でキュっとつかんで、お兄ちゃんのほうを向く。

 お兄ちゃん、美容師だって言ってたから・・・上手いんだよね。